生成AIで社内ナレッジ検索を爆速化する方法|Databricks+ChatGPT 編
「必要なマニュアルが見つからない」「誰に聞けば良いのか分からない」――。社内に眠る膨大な資料やFAQは宝の山ですが、探し出す手間が大きく、生産性を下げる原因にもなります。本記事では生成AI(Generative AI)とDatabricksのプラットフォームを活用し、“検索” を “質問” に置き換えるナレッジ活用法を、金融大手 MUFG の事例を交えて解説します。専門用語は極力かみくだき、初心者でもつまずかないよう丁寧に説明しています。
1. MUFGの最新事例:90%以上の正答率で問い合わせ時間を半減
- 三菱UFJ信託銀行はシステム仕様書・業務マニュアルを生成AIに読み込ませ、社内問い合わせのPoC(試行導入)で正答率 90%超を達成。2024年4月から実運用し、担当部署の対応時間を約50%削減しました公式リリース。
- 三菱UFJニコスは大和総研と共同で社内文書検索AIを開発し、2024年11月から利用開始。手続き・マニュアル検索の時間を大幅短縮しつつ90%超の精度を実現しています大和総研 発表。
- 三菱UFJ銀行は全社AI基盤をDatabricksに統合し、約3万人の生産性向上を掲げています。生成AIはその中核技術として位置づけられています。
2. 「RAG」って何? まずは用語をやさしく整理
RAG(Retrieval-Augmented Generation)は、質問に答える前に社内データベースから関連情報を“検索”し、その内容をもとに生成AIが“文章を作る”方式です。イメージとしては「AIに教科書を持たせてオープンブックテストをさせる」感覚。これにより、
- 最新かつ社内限定の情報を反映できる
- ハルシネーション(事実誤認)を抑制できる
- 検索キーワードを知らなくても自然な聞き方で答えが返る
つまり「探す」時間を「聞く」だけの体験に変えるのがRAGの強みです。
3. Databricksが選ばれる理由 ― Lakehouse AI と Vector Search
機能 | ひと言ポイント | 初心者向け説明 |
---|---|---|
Vector Search | 意味で探す | 文章を数値化(ベクトル化)し「似ている内容」を瞬時に見つける。 |
Unity Catalog | ガバナンス | 「誰が何を見られるか」を一元管理。機密資料も安全。 |
Lakehouse IQ | 社内“用語辞書” | 部署ごとの呼び方を学習し、自然言語でデータにアクセス。 |
MLflow + AI Gateway | 運用と可視化 | AIの回答ログを自動記録し、精度を継続的に改善。 |
4. 社内ナレッジ検索システムを作る 7 ステップ
- 資料集約 ― PDF・Word・FAQをDatabricksのデータレイクへ。
- 前処理 ― 文章を小さなチャンクに分割し、不要な改行を除去。
- ベクトル化 ― Embeddingモデルで数値ベクトルへ変換し、Vector DBを作成。
- 質問受付 ― 社員の質問を同じくベクトル化し、類似検索。
- 生成AI呼び出し ― 見つけた文書をコンテキストにChatGPT APIへ。
- 回答提示 ― 社内ポータルやTeamsに返答。引用元リンクも添付。
- モニタリング ― MLflowでログをチェックし、FAQ不足箇所を補強。
5. 期待できるビジネス効果
- 調査時間を半分以下に。MUFG信託の例では年間数十万時間の削減見込み。
- 知識の属人化を防止。新人でもベテランのノウハウに即アクセス。
- 意思決定が迅速化し、顧客対応や社内承認がスピードアップ。
- 社員満足度向上。ストレスの多い「資料探し」から解放。
6. よくある疑問 Q&A
Q1 セキュリティは大丈夫?
A DatabricksのUnity Catalogで閲覧権限を制御し、外部APIに送る前に機微情報をマスクする方法もあります。
Q2 最初から全部の文書を載せる必要は?
A いいえ。まずは「問い合わせが多いFAQ」から始め、効果を測定しながら徐々に範囲を広げましょう。
Q3 専門部署がないと運用できない?
A 初期構築はデータ部門とIT部門の協力が必要ですが、運用はフィードバック用のフォームとMLflowのダッシュボードで十分回せるケースが多いです。
7. まとめ ― “聞けばすぐ分かる” 社内文化を作ろう
生成AIとDatabricksを組み合わせれば、社内ナレッジ検索は「キーワード検索」から「会話型アシスタント」へ進化します。MUFGのように厳格なガバナンスが求められる金融業界で実績が出ている点は、大半の企業にとって心強い材料です。
まずは小規模なPoCで効果を体感し、社内の理解を得ながらスケールさせてみてはいかがでしょうか。
“資料を探す時間” を “価値を生む時間” へ。 それが生成AI時代のナレッジ活用です。